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78歳の保坂さん喜びの春・吉川美南高定時制感動の答辞

2019.3.25(吉川市)
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 吉川市高久の県立吉川美南高校U部定時制(内田靖校長、生徒143人)で12日、卒業式が行われ、78歳の保坂昭子さん(同市彦成)が卒業生を代表して答辞を述べた。保坂さんは、仕事や子育てを終えてから、同校で学ぶ人を知り、一念発起。入学したものの、テストは零点、体育では若い人との体力差―に悩みながら、「休まず頑張ることならできる」と4年間、走り抜いた。「戦争を経験した高齢の私がこうして勉強できるなんて考えられなかった」と振り返る言葉に会場は静まり返り、教員や生徒たちは胸を熱くしていた。

 保坂さんは東京都大田区生まれ。家が貧しかったため、中学卒業後は都内の電機会社に勤め、結婚後の1967年、大井競馬場(東京都品川区)の馬券売り場の販売員として、約40年間、子育てをしながら働いた。

 定年退職後は三郷市シルバー人材センターに入り、JR新三郷駅周辺の清掃を現在まで続けている。長い間中卒のコンプレックスを抱いていたが、5年前、仕事や子育てを終えてから、同校に通う人の記事を雑誌で読み、「自分もできるかも」と高校進学を決意した。しかし、当初は授業についていけず、「零点の答案用紙を受け取り、不安ばかりだった」。「何か頑張れることをと探したら、休まず健康で学校生活を送り、先生の話を聞きのがさないことだった」という。

 卒業証書授与の後、29人の卒業生を代表して体育館の壇上に立った保坂さん。「74歳で夢に見ていた高校生になった」と語り始め、「4年間、どれだけ皆に助けられたかと思うと感謝でいっぱい。体育の授業で星を見ながら、グラウンドで1000b走ったこと、調理室で料理を作り食べたこと、修学旅行などすべてが忘れられない思い出」と4年間を振り返った。

 「ほかの生徒と年齢の開きが大き過ぎて話題に入れず、体力的に体育の授業は必死でした」と述べ、「この経験は大きな自信になり、前へ進んでいく力になってくれると思います」と約6分間の答辞を結んだ。淡々と語る保坂さんの言葉の裏ににじむ苦労を思ってか、教員や生徒たちは目頭を押さえていた。

 担任の権藤正則教諭(34)は「教室で生徒が騒いでいても、保坂さんが注意すると静かになる。礼儀正しく、ほかの生徒の模範になっていた」と話す。内田校長は「4年間、学び続けるのは大変だったと思う。答辞でさまざまな場面が思い出され感動した。今後も学び続けてほしい」とエールを送った。

 今後、保坂さんは「県内の大学の聴講生として勉強を続けたい」と意欲を見せている。
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