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ありがとう、キーンさん・ゆかりの草加で悼む声

2019.3.5(草加市)
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 2月24日、日本文学研究者のドナルド・キーンさん(本名・キーン ドナルド)が96歳で亡くなった。「奥の細道文学賞、ドナルド・キーン賞」などを通して深い交流のあった草加市では、多くの市民から悼む声が聞かれた。同市は、キーンさんが名付け親の文化交流施設「漸草庵 百代の過客」(ルビ・ぜんそうあん はくたいのかかく)(市文化会館隣)の完成記念式典(28日)に出席依頼した矢先だった。「誰にでも分け隔てない人」「草加のまちおこしの恩人」――温かい人柄をしのぶように、草加松原・百代橋の由来碑前には一輪の花が添えられていた。同市役所西棟1階には記帳台が置かれ、市立中央図書館でも8日から記帳を受け付ける。(関連事3面)

 同市は5月の「奥の細道文学賞、ドナルド・キーン賞」授賞式への出席もキーンさんに打診していたが、かなわなかった。草加を訪れたのは昨年5月、市制60周年記念の古浄瑠璃上演の時が最後となった。訃報を受け、浅井昌志市長は「キーン先生のこれまでの本市への多大なるご尽力に感謝申し上げ、心よりご冥福をお祈りいたします」とのコメントを出した。

 キーンさんと草加との関わりは、1988年11月、市制30周年記念に開かれた「奥の細道国際シンポジウム」の基調講演から。松尾芭蕉の「おくのほそ道」に「草加」の地名があることから、市は「文芸のまちづくり」を掲げ、まちおこしを図った。

 同シンポジウム市民推進委員会メンバーの文芸評論家、染谷洌さん(80)は「訃報にがくぜんとした」と言い、「『奥の細道』は一過性のものでなく、継続できるものにした方がよいと、いろいろとアドバイスをいただいた」と振り返る。以後30年余、私的な交流が続き、「気さくで、誰にでも分け隔てなく同じ目線で話す人だった」。

 当時、草加市長の今井宏さん(77)は「先生の尽力のおかげで、『奥の細道』のまちおこしは、大きな財産。草加に新しい文化を築いてくれた大恩人」と感謝する。今井さんはキーンさんが関わった古浄瑠璃のロンドン公演にも同行している。

 【草加でのキーンさんの足跡】

 キーンさんは1988年の「第1回奥の細道国際シンポジウム」の際には草加松原を散策し、百代橋由来碑の隣に萩の木を記念植樹。92年には、市が公募の「奥の細道文学賞」を創設すると、第6回まで選考委員を務めた、表彰式では記念講演もこなした。日本に帰化した2012年に、市は松尾芭蕉や俳人の評論対象の「ドナルド・キーン賞」を創設した。草加松原が国指定名勝になると、市民と共に喜び、15年3月、ハープ橋近くの記念碑の題字を揮毫し、「漸草庵 百代の過客」の看板も揮毫した。
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