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D・キーンさんら座談会・「奥の細道文学賞」授賞式、「群読も」

2017.5.15(草加市)
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 草加市の「第8回奥の細道文学賞・第2回ドナルド・キーン賞」の授賞式と記念座談会が6日、草加駅東口のアコスホールで開かれ、日本文学者、ドナルド・キーンさん(94)が3年ぶりに同市を訪れ、鳥越文蔵・早稲田大学名誉教授(85)、キーンさんの養子で浄瑠璃三味線奏者のキーン誠己さん(66)、俳人で最終選考委員の黒田杏子さん(78)と記念座談会を行った。その中で、鳥越さんが1962年に英国・大英博物館図書館で発見した古浄瑠璃本をもとに、キーンさん父子の奔走で復活した人形浄瑠璃が、来年11月、市制施行60周年を迎える草加市で、記念上演に向けて動き始めたことが明らかになった。

 授賞式のオープニングで江戸期の俳人、松尾芭蕉の「おくのほそ道」の一節を、市立瀬崎中、両新田中演劇部の生徒たちが原文を朗読し、草加中、新田中英語部の生徒たちがキーンさんの英訳文を群読し、来場者から盛んな拍手を浴びた。

 同文学賞大賞の風越みなとさん(83)、優秀賞の平野由希子さん(62)と林昌子さん(49)に、田中和明市長から賞状と副賞が贈られた。また、ドナルド・キーン賞(大賞該当者なし)優秀賞の高野公一さん(76)に、前回の授賞式以来、3年ぶりに出席したドナルド・キーンさんから賞状、副賞が贈られた。 

 黒田杏子さん司会の座談会は、「古浄瑠璃本が結んだ奇縁」をテーマに文字通りの“奇縁”に話が弾んだ。

 鳥越さんは1962年、ロンドンの大英博物館図書館で、貞享2(1685)年に江戸で刊行された説経浄瑠璃の台本「越後の國柏崎 弘知法印御伝記(こうちほういんごでんき)」という世界に1冊だけの正本を発見し、帰国後、日本で翻刻出版した。元禄5(1692)年、長崎出島のオランダ商館付きドイツ人医師、エンゲルト・ケンペルが、日本から持ち出したもので、ケンペルの死後、大英博物館図書館に収蔵されていた(現在は博物館から分離した大英図書館収蔵)。

 発見から約50年後、鳥越さんと親交のあるキーンさんが、文楽座で三味線を弾いていた経験のある、養子のキーン誠己さんに復活上演を勧めた。誠己さんは、佐渡在住の文弥人形遣いの西橋八郎兵衛さんに相談し、2008年9月、新潟県柏崎市で初演が実現した。
 鳥越さんは「初めて見る作品だった。私の発見というよりも、導かれたようだった」と話す。キーンさんは「仮名手本忠臣蔵など近松作品をこれまで12、13本を英訳した。鳥越さんが見つけてくれたことに感謝する」と述べた。文楽を辞めて新潟で実家の造り酒屋を手伝っていた誠己さんは、「曲が一切残っていなかったので、独自に古い時代の節付けをした」という。6月には、キーンさんも同行して大英図書館で上演する。

 座談会の前、田中市長らを交えた懇談で急きょ、来年の市制60周年記念事業として、草加で“凱旋公演”する方向が決まった。黒田さんは、こうした経過を「奇縁」と述べ、「キーン先生は東日本大震災後に帰化し、誠己さんが養子となったため、幸せな大晩年が開けた」と感慨深げに締めくくった。
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