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メンタル支援が最重要・小川恭平さん<震災10年>C

2021.3.1(越谷市)
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東日本大震災の2年半後、越谷市をかつてない規模の大竜巻が襲った。

当時、埼玉県立大学(同市三野宮)2年の小川恭平さん(27)は、学内でボランティアを募るとともに、自転車で現地に駆けつけた。「初めて体験する地元の大規模災害だった。戸惑いながら、2週間夢中で復旧作業や被害調査を手伝った」。大震災の被災地、宮城県での体験が、この時の活動の支えとなった。

□ 2012年4月、大学に入学したばかりの小川さんは、ボランティア活動をするために、初めて宮城県東松島市を訪ねた。「予想もしなかった風景にぼうぜんとしながら」大量の塩水に浸された畑の清掃を手伝った。畑からは、茶わんなど食器類の破片が泥にまみれ次々に出てきた。学校の身体測定の記録まで見つかった時、その子はどうなったのかと思うと胸が張り裂けそうだった。

 破壊された日常の痕跡に大きな衝撃を受けながらの1泊2日。作業後に被災者たちと語り合ったことが、その後の小川さんの活動の糧になった。

 印象的だったのは、「追い詰められた状況を救ったのは、地域のつながりだった」という言葉。被災地に入る前、被災者たちを元気づけなければ、と肩に力が入っていたが、「反対に自分が元気づけられていた」のに気づいた。

 大学に戻ると、「学生ボランティア支援サークルSolations(ソレイションズ)」を立ち上げた。「身近で大災害が起きた時、自分たちに何ができるだろうか」と考えた結果だ。

 越谷の竜巻でこの取り組みが早速生かされた。 □

「被災者のメンタルの支援が最も大切」なことをこれまでの体験で学んだ。実習を重ね「精神保健福祉士」の資格を取得。現在、伊奈町に住み、久喜市内の精神病院に勤務する。災害派遣精神医療チーム「DPAT」にも登録した。

 「家族や友人を津波で亡くしているのに、つらい感情を抑えて被災者たちが笑顔で私に伝えてくれたことを決して忘れない」と小川さん。それが、「人の役に立ちたい、困っている人を救いたいという自分の気持ちの原動力」と話す。
(安部 匡一)
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