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「公共施設提供は不可能」・「未来のいえ」開設を断念

2016.3.14 (越谷市)
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 越谷市内のNPO法人が、末期がん患者や重度障害者らと介護家族らのため、24時間看護付きの「緩和ケア・ターミナルケア」施設を計画し、小児夜間診療所跡地の利用を市側に申し入れた。しかし、市側はこのほど、「特定の団体に公共施設を譲ることはできない」との姿勢を示し、「医療機関限定で売却する方針で現在、公募中」とNPO側に伝えて来た。このため、NPO側は施設開設を断念した。在宅介護を支える施設として、多くの期待を集めたが、民間の善意も固い“行政の壁”に阻まれた形で、関係者は肩を落としている。

 同施設を計画したのは、NPO法人「未来のいえ」代表理事の山本美紀子さん(63)。山本さんは看護師で、元越谷市医師会立訪問看護ステーション管理者。1995年4月の立ち上げ以来、16年間、同ステーションを通して、同市内の在宅介護の現場に関わってきた。

 介護保険制度のスタート以前から、在宅医療の現場で

「7年間もお風呂に入っていない人や、何十年も外へ出たことがない人」といった人たちや、介護に疲れ切った人たちを見てきた。

 こうした現状を見るにつけ、末期がん患者や重度障害者、要介護者らが、住み慣れた地域や家庭で最後まで生きるためには、医療処置のできるショートステイ施設「緩和ケア・ターミナルケア」が必要と痛感した。

 山本さんが考えたのは、24時間の看護体制で、自宅以外でリフレッシュしリラックスできる場(ショートステイ)。昨年3月、NPO法人を立ち上げ、施設作りの資金集めを始め、旧小児夜間急患診療所(同市神明町)の建物を譲ってもらおうと、高橋努市長に「要望書」を提出した。

旧診療所は敷地944平方b、鉄骨造り2階建てで、築14年。山本さんらは改修して、機械浴のできる特別浴室やショートステイ8床の個室などを作る計画だった。

 しかし、介護保険担当の竹内次男・福祉部副部長は「構想は以前から聞いていた。理想的な施設だけれど、介護保険事業者は自身で施設を開設するのが原則。市が民間事業者に公共施設を提供するのは不可能」と言う。

 新井厚美・保健医療部副部長は「跡地は医療機関に売却する。来年度早期に、個人や法人の医療機関を公募し、一般競争入札で売却する。来年度中に売却先を決めたい」としている。
 山本さんは「介護の共倒れなどで、自ら命を絶つなどの悲劇が絶えない。そんな社会をなくしたい、との思いでやってきたのですが」と話し、「介護保険制度も15年。私の考えたことも10年後には国の施策になっているはず。少し早かったのかな」と無念の思いを噛みしめている。「未来のいえ」はこのほど、解散した。 行政施策の一歩先を見据えた民間事業を、“建て前”ではねつけるのではなく、柔軟にすくい上げる方策を考えるのも、官民協働のあり方ではないだろうか。
(安部 匡一)  
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