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公費予防接種できない・医師会内の対立が原因

2013.7.1 (吉川市)
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 吉川市内唯一の産院で、これまで無料接種できたBCGや日本脳炎などの予防接種が、今年4月から受診者が一時立て替えなければならない事態になっている。このため、地元の母親たちでつくる「吉川市民の健康・子供達の健康を守る会」(内水龍子会長)は14日、今まで通り公費予防接種と公費助成の子宮がん検診などを受けられるようにと、戸張胤茂市長に要望書を提出した。運営を巡る対立で、産院の院長が地元の吉川松伏医師会を除名されたため、発生した。市民からは「医師の対立を市民にツケを回さないで」と怒りの声があり、「赤ちゃんを連れた母親が予防接種を受けるのに保健センターと産院を何度も往復するのは大きな負担だ」と母親らは訴えている。吉川市では「(予防接種などの)委託先は吉川松伏医師会なので、(同医師会以外の)個別契約には応じられない」とし、これらの市の対応に市民からの批判も相次いでいる。

 受診者が一時立て替えなければならなくなったのは、同市平沼の大久保クリニック(大久保典義院長)。同クリニックは同市内唯一の産院で、1か月に約60人の出産があり、そこで生まれた子どもを中心に今年3月までは日本脳炎やポリオなど月300件の予防接種を実施していた。
 大久保院長と別の病院の医師1人は昨年6月、所属していた吉川松伏医師会(平井真実会長)の臨時総会で同医師会の下部組織として、「吉川市医師会」を設立することを提案したが、反対多数で否決。しかし、大久保院長は医師3人で「吉川市医師会」を設立した。これを受けて、吉川松伏医師会では、運営を批判して新たな医師会を設立したとして、9月の臨時総会で除名された。大久保院長らは処分を不服として、地位確認を求める訴訟を昨年11月に東京地裁に起こし、現在も係争中だ。
 吉川市の予防接種は業務を吉川松伏医師会に委託しており、年間の委託料は約1億5000万円(松伏町は約1億1200万円)。除名された同クリニックを今年度の市指定医療機関から除外、市民に配布した「吉川市保健カレンダー」にも掲載しなかった。市は同クリニックで接種を希望する市民に対し、本来は主に里帰りなどが理由で県外の施設で接種した場合に認められる立て替え制度の利用を薦めている。
 同制度は接種前に同市保健センターで申請後、いったん病院で全額を自己負担。その後、さらに保健センターに予診票の写しなどを提出し、受診者の口座に払い戻してもらう制度。実際に振り込まれるまでに2か月かかるという。同市健康福祉部によると、予防接種の費用は医療機関やワクチンにより異なるが、1回あたり1万円から2万円ほどかかるという。
 予防接種は新生児から1歳までの間だけでも、4種混合や麻疹風疹混合、小児用肺炎球菌など、のべ10回以上もあり、すべて立て替えとなると費用は膨らむ。

 大久保医師(77)は「がん検診など検診事業は吉川は医療機関での個別検診だけだが、松伏は施設を使っての集団検診が中心で、やり方が違うため、事業単価が異なる。不公平なため、下部組織として吉川市医師会の設立を提案した。予防接種は現在のやり方では、市民の負担は大きく問題。市と個別契約して、(市民が無料で接種できる)指定医療機関に戻してもらいたい」と訴える。
 これに対し、同市の椎葉祐司・健康福祉部長は「予防接種の吉川松伏医師会への委託は長年の慣例。大久保クリニックとの個別契約は、既存の医師会との不公平を生じるためできない。両者が和解して、もとにもどることを期待している」と話している。なお、吉川松伏医師会では「係争中なので、現在、お答えできない」としている。
 今月14日に戸張市長に要望書を提出した、吉川市民の健康・子供達の健康を守る会会長の内水龍子さん(72)は「大久保クリニックと吉川市が個別契約した場合に行政はどれだけの不利益を被るのでしょうか。市の慣例により吉川松伏医師会の会員のみ契約するという思慮のない通り一編の答えは市民は求めていない。それが若い母親を不安に突き落としているし無責任。市は臨機応変に対応してほしい」と訴えている。
 大久保クリニックで昨年12月に双子を出産した、藤本麻依子さん(31)は「うちは双子なので、いくら後で返ってくるといっても、予防接種代は用意するのも大変な金額です。手続きにも手間がかかります。赤ちゃんを持つ親が保健センターとクリニックを何度も行き来するのは大変です。医師会の問題は市民には関係ありません。早く今まで通りにしてほしい。市民のことを考えた対応にしてほしい」と怒りをあらわにしている。
 医師会内の対立が原因で、市民に「つけ」を回した形になった今回の顛末。多くの市民が困っている現状が明らかなだけに、市は速やかな対応が望まれる。「前例・慣習」にこだわっていてはこの問題は解決しない。
 (安部 匡一)
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