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「街の創造」に挑む八潮市・家づくりガイドブックつくる

2013.4.8 (八潮市)
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 官・民・学の協働による、地域に根ざした八潮らしい街並みをつくろうと活動している、「八潮街並みづくり100年運動実行委員会」(実行委員長=齋藤勝・八潮市商工会長)がこのほど、5年前の発足以来、調査・研究をすすめてきた成果を踏まえ、市民の家づくりガイドラインを作成、「やしお家づくりデザインマナーブック」としてまとめた。ガイドラインは同運動の根幹となるもので、「家族、地域、街並みのつながり」をテーマに地域の特性を取り込んだ家づくりが理念となっている。この理念をすすめ、市民に浸透させ市域全体に広げることで、ほかにはない街を創造していくことがねらいだ。古い町並みの保存運動などはあるが、市街地を対象にしたまちの創造は、全国的に珍しい試み。この発行に合わせ、市ではマナーブックに沿った家づくりをした市民には建築費を助成する制度も今年度からスタートする。
 同実行員会は、50年、100年後を見据えた八潮ならではの地域性を生かした街並みづくりを構築するべく、市と商工会、工学部がある5大学(現在は、日本工業大、東京理科大、神奈川大、神戸大、信州大)が連携し、5年前に発足。ゼミの学生たちがまちを調査し、水路や鉄塔、自然など生かしたコミュニティ空間づくりとして、市街地整備のひとつの在り方を提案し、市民フォーラムなどで活動成果を発表してきた。その成果は駅前公園の設計などに反映されている。
 さらに、「家づくりスクール」を市民向けにこれまで2回開催し、その理念の浸透を図ってきた。5大学の建築家が実際に、参加者を施主に見立てて、さまざまな要望を取り入れながら、地域や建築場所の周辺の特徴を生かした家を設計し模型づくりまで行う実践的なシミュレーションとなった。今回のマナーブックにもこのときに作った「おおきな円側の家」「風の通る家」などのモデル住宅設計図を掲載した。
 これらの活動を経て、今回のデザインマナーブックには、昔からあるコミュニティの方法である「おもてなしの心」をコンセプトに取り入れた。建てたい敷地の周辺の地形などの特徴を生かした家づくりのアプローチとしてまとめた。その背景には、つくばエクスプレス開業などによる急激な都市化の影響で人口流入数は県下でも多いものの、自治会・町会加入率は低く、コミュニティ意識の希薄さが指摘されていることだ。個々の家づくりに着目し、かつてよく見られた住民同士の交流がしやすい空間や雰囲気づくりをつくりだし、それによって街全体を八潮らしい街並みに広げていこうというねらいがある。
 このデザインマナーブックでは、5つのコンテンツで編集。同街並みづくり運動の理念を連携する5大学の教授ら建築家の座談会としてまとめ冒頭に「八潮らしく、家をつくるということ」を掲載。八潮市内のまちの魅力を紹介する「八潮ではじめよう家づくり」、家づくりを始める準備として法規制や敷地周りのチェックポイントなどを書き込めるワークシートを掲載した「家を建てる前に」、くつろぎスペースやお出迎え空間、壁面緑化などによる景観、コミュニティ形成などを意識し提案した「家づくりアイデア集」、資金計画や助成制度など検討するための「お役立ち情報」を掲載した。このマナーブックは、市ホームページに掲載するほか、冊子にして5月以降1000部発行し、公共施設や市内工務店、希望する市民に配布する。
 市は、実際にマナーブックに沿って、通りに面した外壁の1部を自然素材にする、切妻や寄棟など傾斜屋根にする、玄関にひさしや軒下空間を2b以上作る、屋内外をつなぐ縁側やテラスなどを延長1・8b以上作るなどの要綱をクリアした申請物件には1件100万円(5件分)を助成する制度を今年度スタート。施主の協力のもと、助成した物件はモデル住宅として一定期間一般公開もしていく方針だ。市は、まちなみ景観賞のような形で建築した工務店の表彰制度も検討中だ。
 松井輝一・市都市デザイン部次長は「マナーブックをもとに、理念に沿った家づくりが市民に浸透し市内全域に広がってほしい。周辺景観とマッチしたアイデアを凝らした設計など、『おもてなし』を意識した家づくりで、良好な住民コミュニティ形成につながれば。地元の工務店の家づくりに対する技術力、競争力につながっていくことも期待したい。建築費用の助成制度のほか、優れた家づくりをした建築業者などの表彰制度も検討中」という。
 つくばエクスプレス開業以後、八潮市の都市化は激化している。駅周辺の区画整理など市街化整備が進む中、「どこにでもあるまち並み」ではなく、ほかのまちにはない、八潮市にしかない特徴ある街並みにいかにできるかが注目される。(金子 貞雄)

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