写ったぁ

公的支援求めて動き出す・フリースクールりんごの木

2012.6.18 (越谷市)
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 越谷市千間台東にある、フリースクール・りんごの木は今年6月で開設22年を迎えた。NPO法人越谷らるご(増田良枝理事長)が運営するが、学校教育法の外にあるフリースクールには公的な支援はなく、会費、寄付金や企業・団体からの助成金などで運営されているため経済的に苦慮している。このため、寄付を集めやすくするため、今年度中に認定NPO法人化を目指すほか、学校教育法に並ぶ、もうひとつの教育法「オルタナティブ教育法」の法制化の実現に向けて全国の有志たちと動き出した。

 せんげん台駅東口から歩いて1分の場所に、フリースクールりんごの木はある。館内に入ると、子どもたちの元気な声が響き、暗いイメージはまったく無い。現在、小学生から20歳までの39人(市内13人、市外26人)が通っている。不登校の子どもたちの居場所になっていて、スクール内の教室で勉強や科学実験など、それぞれが自分たちのペースで学習している。学習している子どもの大半は通信制高校の所属している子どもたちで、レポート作成やテスト勉強などをして過ごしている。
 フリースクールの年間運営費(人件費、家賃、光熱費、事業費などは約2000万円。収入は会費のほか寄付金や企業・団体(日本財団など)からの助成金だけで、公的な補助は一切無い。
 増田理事長は「たくさんの子どもたちが、周囲から『学校にも行けない子』と白い目で見られながらも成長しています。フリースクールには公的な支援はありません。子どもの親と、かなりの部分がボランティアであるスタッフと支援者の支えでなんとか続けることができています」と苦しい台所事情を話す。
 さらに「子どもたちは敏感です。日本の国が認めていないフリースクールに通っていていいのだろうかと悩みます。堂々と履歴書に書くことをためらう子どももいます。フリースクールで育つことを公的に認めるような社会が実現できないものかと思いを募らせています」と話す。
 りんごの木に通う小学6年生女子(越谷市)は「小学1年生から、りんごの木に通っている。特別活動の日で出かけるときも、参加費や交通費がかかるので気になる。母親が働いてくれたお金で、自分はフリースクールに通うことができているので、母へのお金の負担がもっと減ればいいなと思っています。学校にいっているお金は、もっとフリースクールにも出してほしい」と訴える。
 中学2年男子(同)は「小学2年生から通っていて、何度も学校に戻ろうとしたけど、無理だった。りんごの木には先生がいない、クラスもない、勉強はしたくなったらすればいい。だから楽しい。学校がすべてじゃない。一度、フリースクールを見に来てくれれば分かると思う。ここはちゃんと大人になれる場。だから、フリースクールを学校と同じ扱いをしてほしい。お金は市が出して、もっと堂々と通いたい」と話していた。


 こうした現状を受け、越谷らるごでは、寄付金を受けやすくなる、認定NPO法人化に向け、動き出した。今年度中に埼玉県の認定を受ける予定で、寄付をする側が「寄付金控除」(個人)や「損金算入限度額の枠の拡大」(法人)などのメリットが生まれる。さらに、「フリースクール全国ネットワーク」の一員として、学校教育法に並ぶ、もう一つの教育法「オルタナティブ(英語で二者択一、代替物、代案の意味)教育法」の実現に向けて動き出す。7月8日に国立オリンピック記念青少年総合センターで同法を実現する会の設立総会に参加する。
 越谷市教育委員会によると、市内の小中学生の不登校児童生徒(年間30日以上の欠席者)の数は、2007年度の360人をピークに減り続け、昨年度は224人だった。同教委では教育センターで不登校児童生徒への独自の対応として、適応指導教室「おあしす」を市内3か所に設置し、専門の学び総合指導員6人を配置し取り組んでいる。教科学習を補助し自立と適応を支援し、学校への復帰を目指している。年間約30人が通っている。
 同教育センターの片平秀徳所長は「小中学校では、長欠調査を行い、一人ひとりのケースを挙げてもらい、指導主事が学校に訪問し教員にアドバイスなどをしている。教員向けにカウンセリングなどの研修会も行っている。不登校対策は『保護者(家庭)支援』が重要で学校と家庭の信頼関係づくりが大切だ」という。また、同センター教育相談担当の宮林美枝子主査は「不登校になる原因は最近、様々な要因が重なっている複合型になっている。親が身近に相談相手がいないなど、子育てに自信を無くしている方が多く、電話相談が増えているのが現状です」と話す。このため、今年10月からは新たにメールによる教育相談も受け付ける予定だ。
 同市教委の鈴木秀希学校教育部長は「2008年度から、総合的な不登校対策に取り組んできた結果、不登校児童生徒が4年連続で減少した。適応指導教室『おあしす』を設置し、不登校児童生徒を支援していますが、個々の事情でフリースクールに通う児童生徒もいます。今後も、すべての児童生徒が学校で学ぶことができるよう総合的に施策を展開し、不登校ゼロを目指します」と話していた。
 文科省のデータによると全国の中学校不登校割合は2・9%(2010年度)、埼玉県では2・69%(同)にのぼる。2007年度以降減少傾向にはあるが、決してなくならないものだ。フリースクール全国ネットワークに加盟するフリースクールは67あり、それぞれ運営に苦労している。現在の学校教育法では公的な支援は困難なのが事実。ただ、子どもは等しく教育を受ける権利がある。「もうひとつの教育法」の制定には、さまざまなハードルがあり、時間もかかり実現には紆余曲折が予想される。地方分権が叫ばれて久しいが、「子どもは日本の財産」という観点で、柔軟な対応をする自治体がでてきてもいい。
  (安部 匡一)
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