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幼保一体化に期待感・認定こども園「こどものもり」

2012.4.16 (松伏町)
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 幼稚園と保育園を一体化した新しい施設「総合こども園」が2015年度スタートに向けて動き始めた。これまで、認定こども園と呼ばれていた幼保連携型施設をさらに発展させた形だ。松伏町田中の「こどものもり」(若盛正城園長)では、県内で初の認定こども園として2008年から幼保連携を実施している。これまでの実績を基礎に若盛園長(66)は「認定こども園制度は発足して5年が経つが、高い評価を得る一方で、(国からの)施設整備の補助もなく、二重行政(文部科学省と厚生労働省)の壁を超えることができず、幼保連携型の認定には2つの認可が必要。これらの課題を克服しないと、総合こども園の実現は難しい」としている。さらに認定こども園は、消費増税に合わせて導入されるため、今国会で法案が可決されないと実現できず、政治の壁にもぶつかっている。

 新たに創設される「総合こども園」は、保育所への入所を待つ待機児童を減らすことを目的に政府の「子ども・子育て新システム」の柱になるもの。関連法案が今国会に提出された。総合こども園は幼稚園と保育所の機能を併せ持つ施設。幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省と分かれていた所管を内閣府に統一し、補助金も「こども園給付」に一本化する。新たに定める基準を満たしていれば、認可外の保育施設であっても公費で支援する。新システムは社会保障・税一体改革の目玉となる子育て支援策であり、政府は給付に必要な年間1兆円の追加予算の大半を消費増税分でまかなう方針だ。
 松伏町の「こどものもり」は元は学校法人の幼稚園だったのを2001年に同敷地内に社会福祉法人の保育園を開設し、2007年11月に幼稚園と保育園を一体化した「こどものもり」として、埼玉県認定第1号の「認定こども園」になった。08年4月には国の幼保連携型認定こども園としてスタートした。「こどものもり」は「両親の就労の有無ではなく、どの子も1日の生活がゆったりと過ごせて、楽しく学び合える家の実現」を目指してつくられた。今年1月現在で108人がこども園に通っている。幼稚園と保育所の仕切りをなくし、昼食も一緒に食べるほか、異年齢保育を行うなどが特徴だ。
 若盛園長は「園を学校や施設と捉えるのではなく、0歳から就学前の親の就労の有無にこだわらない温かな家族のように育ちあう一軒の家と考えています。幼保連携の効果で子どもの育ちに大きく貢献している」と話す。
 こどものもりに通う川上弥由ちゃん(1)の母親・川上茉由さん(28)は「子どもはまだ歩き始めたばかりですが、絵本を片付けたり、食べ終わったお菓子の袋をごみ箱に捨てるようになりました。彼女なりに幼保一体の認定こども園でとても多くの刺激を受け、成長しているようです。仕事もしたいが子どもの教育にもこだわりたい。こどものもりは現代家族の理想郷です」と笑顔で話す。
 荻原朔くん(5)の母親・荻原真紀子さん(35)は「こどものもりの室内には幼稚園と保育園の異年齢児が自然に交わる空間が設けられています。1人っ子の我が子にとっては幼保一体は大家族のようです。乳児期はみんなの弟として育ててもらい、4月からはみんなのお兄さんとして活躍しています」と幼保一体化施設の効果を話していた。
 親や子にも好評の「こども園」だが、3年実施してきて、課題も見えてきた。若盛園長はNPO法人全国認定こども園協会の代表理事も務める。全国のこども園からの情報も加味して若盛園長は「制度発足から5年を経過した認定こども園制度は、幼稚園制度と保育所制度をそのままに、幼保が一体的に運営できるようにしたもので、さまざまな不具合が生じている。まず、二重行政の中での運営の困難、異なる財政措置と会計・事務処理など多くの課題がある。従来の制度に縛られた認定こども園では、根本的な解決にならない」と指摘する。
 さらに独自の財政的な支援(施設建設費、運営費など)もなく、持ち出しになってしまうため、増えない(県内で26か所)理由になっている。「今、求められることは、親の就労の有無によって子ども集団や家庭が分断されることなく、地域のすべての子育て家庭が等しく支えられ、共に育つ空間や繋がりをつくっていくこと。そのためには既存のシステムを変えて、新しい総合こども園構想が理想だと考えます」と若盛園長。
 3月19日には全国認定こども園協会は「子ども・子育て新システムの早期実現」についての要望書を関係省庁と政党に提出した。
 待機児童減少が目的だが、国会での法案可決の問題のほかに、既存の幼稚園が総合こども園への移行に慎重なほか、「保育の産業化」に向かうのではとの懸念もある。だが、保育施設拡充には異論はないはず。子どもの育ちの場として何が大切なのか、慎重な議論が必要だろう。
 (安部 匡一)
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