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とーよみの目

就農希望者にカベ・困難な農地取得、賃借

2007.8.27(越谷市)
とーよみの目写真
新規就農して2年の木村さんは、ハウスでのイチゴの苗作りに挑戦し、順調に生育している
  団塊の世代などの熟年世代や若者たちに農業が見直されている。県内では06年に新たに農業を始めた人(新規就農者)は39歳以下で147人と前年の134人を上回り、40歳以上64歳以下では223人(前年は220人)と新規就農者が増えている。食料自給率の低下や食品の安全に注目される中、農業に関心が集まり、新たに始める人が増えている。しかし一方で、農地の取得や賃借は一般には難しく、実家が農家以外の人が始めるのはかなりハードルが高い面もある。  県春日部農林振興センターでは、年3回、農業を始めようとする人を支援しようと、休日就農相談を実施している。今月5日に、今年度初の相談会が開催され、1件の相談があった。同センターの管轄する県東部地区では昨年、一昨年と27人の新規就農者があった。今年も27人が就農している。同センターの湯本達夫地域普及部長は「潜在的に農業をやりたいという人は増えていると思う。ただ、どうすれば農業ができるのかなどが分からない人が多いのではないか」と話す。県の広報で周知するもののPRは今一歩といったところ。  越谷市恩間の元会社員の木村友和さん(52)は05年9月に就農。観光農業のイチゴ園「いちご工房・木村屋」を開園した。木村さんはイチゴ栽培を始めようと、JA南彩で半年間、イチゴ栽培の研修を受け、技術を習得。認定就農者の認定を受け、就農支援資金を借りて、ハウス、イチゴの高設栽培施設を導入した。

 木村さんは大手百貨店の社員として30年間勤めたが、農業をしたいと退職した。実家は農家だったが、長男が後を継いだため、二男の木村さんは農業の経験はなかった。イチゴ園は実家の農地を借りて作った。ハウスは2棟(約1980平方b)の広さで、「とちおとめ」や「あき姫」「紅ほっぺ」の3種類を生産している。設備投資に約3000万円かかった。  就農して2年の木村さんは「ようやく軌道にのってきたが、収益を上げるのが難しい。設備投資費などの初期投資があるため、収益をあげるのはまだ時間がかかりそう。今後は栽培規模の拡大やイチゴを使った加工品作り、売店などもつくりたい」と意欲的だ。イチゴ園は県内では珍しいバリアフリー構造のため、車イスを使ったイチゴ狩りや高齢者や福祉施設関係者の訪問など年間8600人を超える有料入場者数があり、人気の施設にもなっている。市内外から訪れる人が後を絶たない。  越谷市では、木村さんの後の新規就農者はいない。同市内の農家数は1990年に2272軒あったのが05年には1414軒にまで減少している。同市の長柄幸聖農政課長は「高齢化や後継者不足で農業者が減少している。農地も年々減ってきており、今後は遊休農地をいかに有効に使うかが課題。土地があれば農業をしたいという人もいるので、実家が農家でない若者たちにどのように農地を活用するか。借地などハードルを低くしないと増えないだろう」という。  同市内には農業生産法人もあり、農地を使ってほしい農家と農業をやりたい人との橋渡し役になることが期待されている。技術講習や生産から販売まで面倒を見ようという計画で、活動が本格化すれば新たな農業者の確保につながる。  これまで、農業は国が土地(農地)を守ってきた経緯があり、現在では、農業者以外の人が農地を取得するのは事実上不可能になっている。遊休農地の解消は食料自給率のアップまでがからんでいるといえそう。農業者の確保はこうした法律の縛りが阻んできたともいえる。越谷市は農業技術センターも持ち、比較的、農業に力を入れてきているのだから、あと一歩踏み込んだ、農業者の育成が期待される。JAや農業生産法人とのタイアップなどで、これからはハードだけではなく、人材育成に力を注ぐべきだろう。  
(安部 匡一)


 農用地利用集積計画 一般の人が農地を借りる手段として「農用地利用集積計画」がある。農業経営基盤強化促進法第18条の規定。農地法の特例で市町村の農業委員会で決めることができる。農地法の許可は必要ない。下限面積の50eの要件もないが、実際にはまとまった面積で借地の了解を得るのは難しい実態もある。
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