(越谷市)
手帳所持者5年で2倍に・行政の対応も後手に 増加する精神障害者
越谷市内で精神障害者が増えている。精神障害者保健福祉手帳所持者が02年には310人(1級61、2級187、3級62)だったのが、今年1月末で754人(1級84、2級488、3級182)と約5年で2倍を超えた。手帳交付を申請しない人も多いと見られ、越谷市障害福祉課では「実際にはもっと多いのでは」という。統合失調症が多いが最近ではうつ病も増える傾向にある。

相談日に多くの精神障害者の家族から相談が多く寄せられている
 
 市内の精神障害者の家族でつくる、やまびこ家族会(今井哲夫会長)では、昨年10月から独自に電話相談と面接相談事業をスタート。これまで40件を超える相談が寄せられ、今井会長は「統合失調症の人のいる家族は不安や心配事がいっぱい。ふだんは相談する相手もいないのが現状で、実際に(精神障害者と)対応している家族会のメンバーが相談を受けることで、親身になって話を聞ける」という。今後も相談は増え続ける傾向で、「統合失調症にはまだ偏見も多く、家族が孤立してしまう」ことや「多額の医療費を長い期間負担しなければならず、経済的な不安が多い」ことが課題のようだ。
 市内に住む、同家族会副会長の小柳敬さん(69)の長男(36)は17歳で、統合失調症に。高校の野球部に所属するスポーツマンだったが、突然の発症に家族はあわてた。長男はその後、精神病院に入退院を繰り返し、就職もできず自宅で暮らす日々だ。小柳さんは「落ち着いているときはいいのですが、突然暴れだすことがある。薬が効いているときは、ぼーっとしていて、親も高齢なので今後、息子が一人でどのように生きていくのか不安でならない」と話す。
 また、山口登さん(72)も三女(38)と長男(36)が共に10代で統合失調症になり、入退院を繰り返している。山口さんは「昼夜逆転の生活で、日常生活に不安がある。統合失調症は原因の分からない病気。将来に大きな不安を残している」と不安をのぞかせる。どの家族も親が高齢化しているのが共通で、親が亡くなった後、精神障害者の子供がどのように生活していくかが緊急の課題だ。家族会では、グループホームなどの建設を考えるが、費用もかかるため、めどは立っていない。

 越谷市では増え続ける精神障害者の自立支援をしようと、独自の施策を実施している。まず、高額になりがちな医療費の負担を補助しようと、手帳1級所持者を対象に、通院医療費の自己負担額を市が補助している。実質的に自己負担はなくなる。今年度は2月末までに、176件25万3540円の補助をした。03年10月からスタートし、外来診療費のほか薬代、デイケア、訪問看護利用料も対象になる。また、月額5000円を支給する重度心身障害者手当も1級者のみ支給している。さらに1級者のみに福祉タクシー利用と自動車燃料費助成も行っている。
 国と県も負担している自立支援医療費(精神通院)制度は最高で自己負担額の10%を負担する制度。こちらは手帳がなくても利用できるため、昨年4月から今年1月末までに2488人が利用し、今後は3000人に迫る勢いだ。ただ、高額になる入院医療費に関する補助はなく、精神障害者を抱える家族の不安は続く。
 同市の永野雄一障害福祉課長は「入院医療費の自己負担額の助成やグループホームの設置など、さまざまな要望を家族会などから受けている。しかし、実施するには莫大な税金を投入することになり、今の時点では実現は難しい。ただ、今後は障害者自立支援法の中に精神障害者も入ることになり、市としても独自の障害者福祉計画を今年度中につくり、福祉サービス向上に努めたい」という。同市でも福祉関係予算が一般会計の4分の1を超え、今後も増える見込みだ。
 さらに、就職など社会復帰への自立支援は進まない。市の就労支援センターによると昨年度、就職できた精神障害者は9人。就職先はスーパーや飲食店などだが、こちらは企業側の受け入れ態勢不備もあり、行政だけでは難しい現実もある。
 同家族会の電話相談員の一人、佐藤春雄さん(73)は「相談日には多くの電話相談がありますが、私たち経験者が対応することで、相手の不安の気持ちも理解でき、相談者にアドバイスもしやすい。少しでも相談者の不安の解消になれば」という。
 精神障害者への対応は身体、知的障害者に比べて遅れている。制度自体も不備があり、社会的にも理解されていない面も多い。精神障害は個々で症状が異なるため、対応も細かにしないといけないが、行政は「(精神病は)だれもがなる可能性のある身近な病気」ということを多くの人に理解させ、さらにもっと多くの相談窓口を設けるべきだろう。   
(安部 匡一)
 精神障害者の家族相談事業
 電話相談は毎週水・金曜日午前10時から午後3時までTEL977・5543。面接相談(予約制)は毎週土曜日午前10時から午後3時まで、越谷市大吉464の1 越谷市住まいの情報館内で。問い合わせは越谷市精神障害者を守る会(やまびこ家族会)TEL965・4356へ。