(草加市)
産科再開メド立たない草加市立病院・医師が集まらず 全国的な医師不足が拍車
 草加市立病院の産科が05年3月から休止している。産科医不足は全国的な傾向だが東部地区の5市1町では草加市がこの問題の矢面に立った。
 

産科が休止してもうすぐ2年になる草加市立病院
 
草加市在住の母親にとって市立病院に産科がないのは不安だという声が多い。
 同市在住の石崎さん(33)は06年5月に都内の実家近くの病院で出産した。「上の子供を3年保育に入れたかったが、実家に戻ると、すぐにやめさせなければならないのであきらめました。こちらで産めれば通わせたかった」と語る。
 遠距離での通院となると車を使う場合が多くなる。子供を乗せての安全運転を心がけなくてはならない。「考えた末、実家で産むことにしました」とのこと。
 また、05年9月に出産した別の主婦は「市立病院で予約を取っていたが、急に休止するとのことで、越谷市内の病院(民間)で生むことになりました」と話す。「姉妹も市立病院で出産しているので自分もそうするつもりでいました」とも語っていた。
 06年に娘(33)の出産(孫の誕生)の世話をした石関真悧恵さん(60)は「近くで出産させてやることが出来れば良かったのですが、都内の病院まで通いました」と話す。
 06年2月に越谷市内の病院(民間)で出産した小柳さんも「草加で出産できればいいな、という気持ちでした」と言う。
 草加市立病院の産科は開院以来、年に600名から700名(月50名以上)の出産を扱ってきた。
 同病院の宮野和雄事務部長によると、同病院の産科は医師5人体制で行なっていたが、退職により05年3月には担当医が3人になってしまったため、当直勤務、急患への対処などを含む安全な医療を責任を持って遂行出来なくなり、やむなく休止したとのこと(残る3人も同年6月までに退職)。
 「もちろん各医科大学に働きかけて産科医を探していますが、なかなか目途が立ちません」と宮野部長は苦しい実情を語る。
 少子化時代とはいえ、実際に産科医の不足は大きな問題になっている。日本産婦人科学会も「産科医が減り続け、産科医療が危機に陥っている」と頭を痛めている。
 05年7月の調査によると、大学病院、関連病院で出産を扱う病院は2年間で1.009から914に減った。「お産を扱う医師や施設の数は、出生数の減少より、はるかに早いペースで減っている」(筑波大吉川裕之教授)という状況だ。
 草加市の状況は、いつ他の市で起こるかわからない事態である。
 産科医不足の背景には、勤務が過酷なため若い医師が産科を敬遠するのも理由の一つ。
 お産は昼夜を問わない。出産時の異変に対する緊急対応も必要だ。高齢出産、妊娠中毒症、糖尿病などの妊婦を抱えると産科医の仕事は激務になる。
 ちなみに北海道大学が04年に道内30箇所の関連病院で行なった調査では、産科医の年間の当直日数は平均123回、当直明けに休みが取れる病院はゼロ、という状況だった。  勤務が過酷だから志望者数が減る、産科医の数が減るから勤務が更に過酷になるという悪循環に陥っているようだ。
 草加市は01年から「子育て支援課」を設けて、子育てに対する熱意を示しているが、肝心の出産に対する支援で苦しんでいる。
 産科を再開するためには勤務状況の整備、担当医の数の確保が大きな要素になる。全国的な産科医不足の中で、ゆとりある勤務状況の整備は非常に難しい。
 同病院では必死の働きかけで新しい産科医2名(05年7月、06年9月)を雇用することが出来たが、現在は婦人科系疾患の治療に当たっている。
 産科を再開するには、更に2、3名は必要であるとのこと。今年も盛んに働きかけを行なう予定であるが、再開の目途は立っていない。
 地元の医師会や開業医と連携し、医師を派遣してもらうのも一つの方法だろう。
 非常に難しい課題であるが、地域の母親が安心して出産できる医療の提供は公立病院の使命である。同病院の一層の努力に期待したい。
(加藤 誠一)