(越谷市)
気になる健診の低受診率・問われる行政の対応 始まった介護予防サービス
 介護保険制度が今年4月に改正され、新たに虚弱高齢者のための介護予防サービスが始まった。要介護認定の非該当高齢者を対象に機能訓練などを行い、将来要介護にならないようにするのが目的。越谷市では10月から、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」の3つの介護予防サービスをスタートさせた。
 同サービスは、65歳以上で「基本健康診査」を受けている人が対象。この健診結果で生活機能の低下が心配される人で、全国共通の「基本チェックリスト」(25項目)を記入し、対象者を決める。ただ、越谷では「基本健康診査」の受診率は低く、平成17年度で49・8%(40歳以上)で、65歳以上だけを見ると対象4万9748人のうち、1万3967人しか受診していなく28%に過ぎない。このため、同サービスは入り口が限られているため、健診を受診しない健康に関心のない将来の介護が心配される人は受けられないしくみになっている。  

運動器機能向上プログラムでマシントレーニングをする参加者
 
 今回、越谷市でスタートした3つの介護予防サービス事業の対象者は171人(今年5、6月の健診受診者、10月3日現在)にのぼった。市包括支援センターの保健師が訪問調査し希望をとったところ、71人が介護予防サービス事業への参加を希望した。今年度の予算(10月〜来年3月)は520万円。訪問した保健師によると「反応はさまざまで、健康に自信があるからいいよ、と断られるケースもあった」や「健康状態は変化するため、足腰が良くなり、自由に歩けるようになるなどの人もいた。チェックリストが自己記入のため客観性に欠ける面がある」という意見もあった。

 介護予防事業のひとつ「運動器機能向上プログラム」が先月11日から、12回講座として、同市七左町のアイリスケアセンター茜で始まった。手足の動きが鈍くなって歩きにくいなどの市民を対象に8人が参加している。同講座をのぞいてみると、まずストレッチなどの準備運動のあと、個人の体力に合わせて空気圧式のトレーニング機器を使ったり、ゴムバンドを使った運動など約2時間たっぷりと汗を流していた。
 参加者の一人、水上洋子さん(72)は「骨粗しょう症になってしまったので、リハビリを兼ねて参加しました。ふだんは家にいることが多く、足腰を動かさないのでいい運動になります」。川岸光枝さん(74)は「病気の後遺症で左半身が不自由。この介護予防教室はいい運動になりますし、汗を流すと気持ちいいですね」と話していた。別の男性(83)は「最近よく転ぶようになったので参加した。普段、使わない筋肉を使うのでいい運動になる」という。
 同講座は、送迎付きなのが人気の秘密。同センターの看護師・笠井憲子さんは「参加されている人の運動の潜在能力は高い。体に負担がかからないように運動するよう心がけています。皆さん真剣に取り組んでいますね」という。個別プログラムで実施されるため、マシントレーニングなどでは、個人に合わせた負荷をかけて行うなど、きめ細かに調整できる。  このほかの介護予防プログラム「口腔機能向上」は先月24日から実施され、「低栄養改善」は今月16日からスタートする。
 介護保険制度が改正され、これまで「要介護1」だった人が「要支援1」「要支援2」になって、給付額が少なくなった例も多い。過剰な介護サービスを減らしていこうとの狙いもあるのだろうが、利用者からは「サービス低下だ」との声も聞かれる。今回の介護予防サービスは「要支援」から自立のグレーゾーンにいると見られる人を対象に、「要介護」になるのを少しでも遅らせようという狙いがあるのだろう。定着するかどうかは市町村の腕にかかっている。
 同市の小勝康宏健康福祉部次長は「介護予防サービスは始まったばかりで、定着するかは未知数。ただ、市として基本健康診査の受診率を上げるなど積極的に市民に周知を図り、健康づくりへの関心を高めたい」と話している。
 高齢者の健康診査の受診率が上がらないのはなぜなのか、市としてもきちんと検証する必要があるだろう。元気だからなのか、無関心なのかは分からないが、入り口を整えないとせっかくの「介護予防サービス」の意義が半減してしまう。  要介護者が増えれば、介護保険料へ跳ね返るのはもちろん、納税者への負担も増えることにつながる。元気で長生きすることは多くの市民の願い。介護予防は公共サービスの位置づけになったのだから、市町村は多くの人が受けられるような受け皿づくりに力を入れなければならない。  
(安部 匡一)