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キーンさん追悼座談会・市が功労に感謝状贈呈

2019.5.27(草加市)
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 さる2月、96歳で亡くなった日本文学研究者のドナルド・キーンさん。19日、草加市の草加駅東口のアコスホールで、キーンさんゆかりの「第9回奥の細道文学賞・第3回ドナルド・キーン賞」の授賞式が行われ、同市からキーンさんに感謝状が贈られ、出席者らが追悼座談会でキーンさんの人柄や業績をしのんだ。授賞式に出席したキーンさんの養子で人形浄瑠璃三味線奏者のキーン誠己(せいき)さん(69)は、オープンしたばかりのキーンさんが名付け親の日本文化交流施設「漸草庵」を訪ね、キーンさんと草加との固い絆に感慨深そうだった。

 授賞式は、市立両新田中の演劇部生徒8人の「おくのほそ道」の一節の群読で開会。浅井昌志市長から、奥の細道文学賞創設や審査員としての尽力に対し、ドナルド・キーンさんに感謝状が贈られ、キーン誠己さんが受け取った。誠己さんは「父は昭和63年(1988年)から草加と深いかかわりを持たせていただいた。父も感謝をしていると思う」と謝辞を述べた。

 この後、奥の細道文学賞の優秀賞の平野由希子さん(64)(東京都)、西原和美さん(71)(福岡県)、佳作の吉澤恵子さん(30)(伊奈町)の3人と、ドナルド・キーン賞の初の受賞となった評論家、栗田勇さん(89)(東京都)に表彰状、副賞がそれぞれ贈られた。

 追悼座談会は、最終選考委員の国文学者、堀切実さん、俳人の黒田杏子さんと長谷川櫂さんの3人にキーン誠己さんが加わり、思い出話に花を咲かせた。

 長谷川さんは「優れた外国人の目で日本文学を洗い直し、丁寧に戦争に負けた国の文学を世界の文学にしていただいた功績は大きい」と述べ、黒田さんは「栃木県の黒羽町(現・大田原市)での奥の細道シンポジウムの折、キーン先生の名前を入れた句を詠んで発表した雑誌を贈り交流が始まった。手紙の封筒に歌舞伎など日本文化の切手を貼るといつも喜んでいただいた」と振り返った。

 また、堀切さんは「茶目っ気とウィットに富み、古典から近代の日本文学を克明に調べ、日本人が気づかない視点を持っていた」と高く評価した。誠己さんは「神経質な面もあったが、自然と出てくるユーモアで人を温かくさせた。父から限りのないものを得ることができた」と話していた。


 一方、19日午前、授賞式を前にキーン誠己さんは、オープンしたばかりの同市松江の日本文化交流施設「漸草庵 百代の過客(ぜんそうあん はくたいのかかく)」を訪れた。

 「今日は、漸草庵の完成を見られなかった父と一緒にという気持ち」と誠己さん。同施設を管理運営する、公益財団法人草加市文化協会の長谷部健一理事長、曽合吉雄副館長らの案内で、木造平屋建て数寄屋造りの外観や和室、茶室などを見学した。

 入り口に飾られているキーンさん揮毫(きごう)の扁額(へんがく)の前では感慨もひとしおの様子。持参した遺影を抱いて、記念撮影をした。遺影は漸草庵に寄贈され、「お休み処」内の芭蕉、曾良像の彫刻に並んで飾られた。

 お休み処で抹茶を楽しんだ後、国指定名勝の「おくのほそ道の風景地 草加松原」に足を伸ばし、キーンさん揮毫の名勝記念碑や30年前、キーンさんが植えた萩の木を見学した。

 誠己さんは「何か所も父の足跡が残っていて感激した。草加市の皆さんに感謝したい。父によい報告ができる」と喜んでいた。
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