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「足尾」の絵を常設展示・鈴木さんが「私設美術館」開設

2016.8.1(草加市)
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 公害の原点とされる「足尾銅山」(栃木県日光市)を40年近く描き続けている草加市神明町1の画家、鈴木喜美子さん(74)(同市美術協会会長)が、私設美術館「ミュゼ環 鈴木喜美子記念美術館」を建築中で、10月にもオープンする。老朽化と東日本大震災で自宅の一部が壊れ、保管している作品にも傷みが目立ってきたため、建て替えと同時に美術館を併設することにした。「特に子どもたちに見てもらい人間の愚かさ、自然の大切さを感じてもらいたい」と鈴木さん。約150点にものぼるライフワークを収めたユニークな個人美術館は、美術ファンだけでなく多くの注目を集めそうだ。

 鈴木さんは武蔵野美大出身。「新制作協会」(1936年に小磯良平らが創設)に所属して、多摩美大名誉教授の福島誠さんに師事し、油絵を描いてきた。

 相次いで両親を亡くし傷心を抱えていた35、6歳の頃、鈴木さんはスケッチ旅行でたまたま訪れた「足尾の風景」にがくぜんとした。閉鎖され人気のない工場や緑を失った山、灰色に光る川…その異様な光景が、両親を亡くした寂寥感とあいまって、不思議な創作意欲を湧き起こした。以来、とりつかれたように山に通ってスケッチを続け、「自然が再生していく息吹を感じながら」(鈴木さん)ひたすら描いてきた。

 所属する、新制作協会展に毎年、作品を発表する一方、県立近代美術館や栃木県宇都宮市、草加市などで、「足尾―風土円環」と名付けた個展を開いてきた。20005年には、米国・ニューヨーク市の国連本部でも個展を開き、海外にも衝撃を与え、大きな反響を巻き起こした。これまで描いた「足尾」の作品は、300号を筆頭に、50号から150号をメインに約150点にのぼる。

 自宅に併設される美術館は木造平屋建て約50平方b。50号の作品が6、7点ほど展示できる広さだ。天井を高くして輝度調整できるLED照明で雰囲気を演出する。特徴は、外側の道路から300号の作品が見えるように、ショーウインドウを設けたこと。また、空調設備の整った保管倉庫を設ける。「ミュゼ環」の館名は、フランス語の美術館を意味する「ミュゼ」と作品や人とのつながりを込めた「環」から命名した。

 「足尾」の作品群を、@廃屋が多く残り夢中になって描き続けた「1980年代」A第三者的に俯瞰して見られるようになった「90年代」B自然が再生し明るい色が増えた「2000年代」―の3期に分けて、それぞれの時期から選んだ作品を入れ替えながら随時展示していく。

 鈴木さんは「足尾は工場も撤去され、かつての面影が消え、その歴史も風化しつつある。かつて人間が便利さと引き換えに失った自然の滅びゆく姿と再生し生まれ変わる姿のはざまを感じられる展示にしていきたい」と話し、「特に美術館に行く機会が少ない子供たちに、人間の愚かさや自然の大切さなど、絵から何かを感じてもらいたい」という。

 「ミュゼ環」の開館日は毎週金、土、日曜と祝日を予定。また、休館日には、著名画家の作品展や貸し画廊としても活用するほか、鈴木さんの絵画教室も随時開く予定だ。
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