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「録音図書」に文科大臣表彰・「こだま文庫」視覚障害者支え46年

2020.4. 6(越谷市)
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 視覚障害者への支援をしている越谷市のボランティア団体「こだま文庫」がこのほど、文部科学大臣から「功労者表彰」を受けた。1974年の設立以来、約半世紀にわたり、同市立図書館の協力を得て、「録音図書」を製作し、目の不自由な人に届けている地道な活動が評価された。これまでに、410タイトル(小説や随筆など)を製作し、「対面朗読」なども行っている。受賞したのは今回が3回目の文科省の「障害者の生涯学習支援活動に係る表彰」。全国64の個人・団体が表彰されたが、大臣賞は最高位。「長年の活動が報われた」と関係者は喜んでいる。

 「こだま文庫」の会員は現在、50代から70代まで27人。活動のメインは、「録音図書」の製作。会員が図書を朗読し、CDに録音して、同市立図書館も納めて希望者に無料で貸し出している。また、視覚障害者宅を訪問して「対面朗読」も行い、年に数回、市内の視覚障害者施設で「朗読会」も開催している。会の代表となる「世話人」は毎年交代制で、今年の世話人は永井孝子さん。

 1974年、越谷市の主婦、池田脛子(のりこ)さんが、春日部市内の教会で知り合った視覚障害者が自由に読書を楽しめないことを知り、「朗読してあげれば」と思い、近所の人たち6人でグループを立ち上げたのがスタート。「呼べば答える」の意味で、「こだま文庫」と名づけた。

 発足当初はカセットテープに録音したが、テープの購入代金がなく、地域のライオンズクラブから寄付してもらい、「市民まつり」で手作りケーキや水あめを売って、資金を集めた。完成したテープは当初、池田さんが自宅で保管していたが、越谷市社会福祉協議会にボランティア団体として登録後は、同協議会に保管し、テープレコーダーも購入してもらった。

 同市立図書館で行っている録音は根気のいる作業で苦労も多い。まず、読む本を選び、「下読み」した後、「正しい読み」や「正しいアクセント」、さらには「文節を考えて、内容をとらえる」ことに留意しながら、丁寧に読んで録音し、編集する。会員相互で校正を3回繰り返すため、完成まで約5か月かかるという。

 永井さんは「日本語は読み方で意味が変わる。文節のかたまりをとらえるのに苦労する」と話す。また、「固有名詞の読み方に苦労する。下調べだけで数か月かかることもある」と池田さん。朗読会では、「会場は公共施設が多いので、遠くの方にも音声が届くように言葉を大きく、はっきりと話すように気をつけている」(米田和子さん)という。

 テープからCDに変わった今、完成したCDは同市立図書館に納め、図書館が全国ネットの「電子図書館」に登録している。希望者は申し込みをして、CDを送付してもらったり、ダウンロードして聴いている。「面白かった」「次はこの本を録音して」といった利用者からの反響が会員の励みだ。利用者は70〜80代の人が多く、約7割は女性という。

 AI(人工知能)が活字を音読する時代になったが、温かみのある肉声を求める人が多い。永井さんは「目の不自由な方々のリクエストや反響の声に励まされて50年近く、活動を続けてきた。利用者から多くのことを学ばせていただいてきた。生涯自分らしく豊かに生きたい」と受賞の喜びを話している。
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