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「補助ゼロ」で存続の危機・重度心身障害者施設「あすなろ」

2017.6.5(越谷市)
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 越谷市恩間の重度心身障害者地域活動支援センター「ぷろっぷ はあと あすなろ」が、国や県からの補助金が打ち切られ、存続の危機に追い込まれている。同施設には重度の肢体不自由と知的障害が重複する寝たきりや、全生活要介助の「最も重い障害」を持つ19歳から33歳の9人が通う。「1日の実利用人数10人との基準を満たしてしていない」が打ち切りの理由。2016年度から打ち切られたため、越谷市は同年度の国、県の補助金を肩代わりし、今年度からは市だけで補助金を出しているが、これも3年間の期間限定。関係者は「利用者らの行き場がなくなってしまう」と悲痛な叫びをあげている。

 「あすなろ」はNPO法人「あすなろ」(小野寺喜久子代表理事)が運営する民間障害者施設。03年5月、越谷養護学校(現在の越谷特別支援学校)卒業生の通所施設を、と卒業生の親たちが現在地にデイケア施設を設立したのが始まり。07年、国の「障害者総合支援法」により、NPO法人運営の「地域活動支援センター」に移行し、「地域活動支援事業」(創作的活動や生産活動の機会を提供し、社会との交流を行う施設)を行う場所となった。

 通所しているのは9人。寝たきりや医療的ケアが必要な人もいて、重度の障害のため、かぜをひいただけでも欠席が長引き、亡くなる人もいる。木造3階建て住宅を改築し、看護師やスタッフが常駐している。通所者は「さをり織り」と呼ぶ布づくりやパッチワーク、「ちぎり絵」を制作し、給食や外出活動も行っている。

 運営は国、県と市の補助金でまかなっており、国、県は約590万円(年額)、越谷市は約1354万円(同)の年間計約1943万円で運営している。

 16年度末に補助金打ち切りが宣告されたため、市は急きょ、特例の「救済措置」を設けて、同年度分の国、県分の補助金を肩代わりしたが、今年度の補助は市の約1354万円だけとなった。市の補助は今のところ、19年度までの3年間となっている。

 補助打ち切りは、県の「地域活動支援センター事業実施要綱」で、「実利用人数(年間の利用人数の1日の平均利用人数)」が1日10人以上と定められているが、「あすなろ」は、この3年間、8、9人と基準を充たしていないため。県は昨年5月、市に「改善策」を求め、「あすなろ」は、施設見学会を開くなど利用者増加を図ったが、利用者は増えなかった。

 長男(33)が重度障害で通う、小野寺代表理事(62)は「数字だけで判断されると、重度障害者たちの地域参加の道がなくなる。ここがなくなれば、通える施設はない」と困惑する。

 同市の山元雄二・障害福祉課長は「現行制度では医療的ケアが必要な施設は、受け皿がない。今後は在宅の福祉サービスを中心に提供し、支援していくしかない」と話す。

 保護者でつくる「越谷市障害児・者とともに生きる会あすなろ」会長の横川美香さん(55)は、「どんなに重い障害があっても、地域に出て友人の声を聞き、多くの人と触れ合い、季節感や空気を感じたい」と施設の役割を話し、「このままでは社会参加の道筋が消えてしまう」と訴えている。
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