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被災者を「落語」で癒やす・高橋敏文さん

2016. 3.21(越谷市)
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 大きな拍手が起きた。宮城県石巻市の集会所。「あっ、受け入れてくれたんだな」と思うと胸が熱くなった。震災翌月の2011年4月、「いても立ってもいられず」石巻市に行って、炊き出しや集会所設営の手伝いをした。得意の落語を被災者の前で披露しようと思ったのは、「落語で笑っている間はつらいことを少し忘れることができる」という地元の人の言葉。その言葉に背中を押され、「最初は不謹慎かな、と思ったけれど、夢中で『〇〇〇〇』」を演じると、みんなが本当に笑ってくれた」。
 以来、越谷市社会福祉協議会のボランティアバスに乗って、あるいは自分の車での岩手や宮城の被災地通いが始まった。毎月1回、仮設住宅や集会所で開く「寄席」はボランティア活動の定番メニューとなった。
 元製粉会社営業マンの高橋さん。長年の落語好きだったが58歳の時、都内の落語教室に通い、三遊亭円左衛門のもとで3年間勉強した。足に障害があるため、立ったまま語る“スタンディング落語”が高橋さんのスタイル。「五十八亭ふすま丸」を名乗り、古典のほかオリジナルものも得意としている。
 落語だけではない。被災地では「漁師さんに頼まれ、漁港でワカメの分類作業やホタテの稚貝セッティング作業もやるようになった。作業の後の地元の人たちとのイッパイが何より楽しいね」。
 高橋さんに、ボランティアバスで知り合った“相棒”ができた。同じ越谷市内の成田光義さん(70)。元警視庁刑事の成田さんは、うどん作りが趣味で材料から燃料まで自前で持ち込み、手作りうどんを振る舞う。「自分の趣味がボランティアに生かせてよかった。被災地で多くの人たちと知り合えた」と成田さん。
 高橋さんの落語で笑ってもらい、成田さんのうどんで空腹を満たしてもらう――男ふたりの被災地通いは5年目を迎えても、まだまだ続く。
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