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世界に誇るちぎり絵作家・渡会不二男さん「優秀技能者」に

2014.4.28(越谷市)
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 手すき和紙の特徴である長い繊維を生かし、筆で描いたような風合いを生み出すちぎり絵「和紙ファイバーアート」。日本で唯一、越谷市弥栄町の渡会不二男さん(72)だけが持つ技法で、国内外から高い評価を得て、昨年、県から「彩の国優秀技能者」として表彰された。この受賞を記念して13日から19日まで、越谷市中央市民会館で「和紙ファイバーアートの世界」と題した個展が開かれ、その自然の風景をモチーフにした迫力ある作品に訪れた市民は「すごい、本物の木のようだ」と感嘆の声を上げていた。

 和紙ファイバーアートは、国の重要文化財に指定されている、小川町で作られる楮(こうぞ)=桑科の落葉低木=だけを使った手すき和紙「細川紙」を使った独自の絵画表現技法を目指し、度会さんが試行錯誤を繰り返して生み出した表現技法。毛足の長さを活かし、和紙そのものを絵筆として創作する絵画。和紙に水彩絵の具で色を付け、染色だけに頼らず、和紙の組み合わせによって色を創り出す。手で和紙をちぎり、濃淡を表現し、油彩や水彩のように絵を仕上げていく根気のいる芸術だ。のりと手、指以外の器具や用具を一切使用しない。和紙を重ねることで、自然の立体感が生まれる。
 中央市民会館で開かれた個展では、長野県の志賀高原で風雪に耐える樹木など、自然風景を表現した100号から130号の大作20点が展示された。同会館では、初の展示となったが、まるで油絵のような迫力あるタッチに来場者は足を止めて作品に見入っていた。特に樹木はまるで本物の木がそこに生えているような精密な表現で、和紙を重ねて作ったようには見えない。自然の厳しさが伝わってくる。
 度会さんは、元乳業メーカーの社員。営業先の小川町で手すき和紙と出会い、その質感に感動し、和紙を生かした芸術活動したいと30年間勤めた会社を定年前に辞め、創作の道に。幼いころから絵が趣味で水彩画を描いていたのと、今は亡き妻・福子さん(享年65)が、ちぎり絵をやっていたため、自然と和紙を使う絵を創作するようになった。絵は独学だったが、持ち前のセンスで1989年には埼玉県展入選や新協会美術展(東京都美術展)入選をはじめ、92年からは大宮そごうや松屋銀座などのデパートや埼玉県立美術館などで個展を開催し、その独自のアートを発表してきた。
 度会さんは「制作者である前に創作者でなければならない。もし美術を専門に勉強していたら、この芸術は生まれなかった。ゼロからの発想で考えたもので、ほかの人が真似できないところがいい。和紙の組み合わせによって最大限に色を創り出すには根気が必要ですが、作品を完成させたときの喜びは大きい」と笑顔で話す。
 創作歴は27年になるが、独自の作風と埼玉県産の和紙を使用していることが評価され、見事「彩の国優秀技能者」として表彰された。「ちぎり絵にすんなりと取り組めたのも、ちぎり絵をやっていた妻のおかげ」といい、自宅アトリエには福子さんの遺影が飾られている。今チャレンジしているのは樹齢300年の立山杉の風景。130号の大作で完成には1年以上かかりそうだ。
 モチーフは自然を描いたものが多い。「木から生まれた和紙で生命力を表現したい。これからも生涯現役で作品作りに取り組みたい」と創作意欲は尽きない。

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