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県美術家協会賞を受賞・篆刻の伊東さん

2013.6.11(越谷市)
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 越谷市大沢の伊東鬼游(いとう・きゆう=本名・紀由)さん(73)は書(篆刻)の部の「樂此不疲(これをたのしみてつかれず)」で埼玉県美術家協会賞を受賞した。県展には1989年から毎年出品を続け、毎回入選を果たし、入賞は6年ぶり3回目。5年前に心筋梗塞を患い、闘病生活を続けたが、無事に復帰。病後初の入賞だけに、「毎回、入賞を狙って制作していますが、今回は病後だけに、とびきりうれしい。3度目なので一つの節目になります」と喜ぶ。
 受賞の篆刻作品は7a四方の枠の中に象形文字で「樂此不疲」と彫った。朱色の朱肉で半紙に印字された文字は微妙な擦れを出し、朱色の文字の部分と白い部分のバランスをとった味わいのある作品。「樂此不疲という言葉は今の自分の気持ちを表したもの。文字のデフォルメと文字と白い部分のバランスに苦労した」と伊東さん。
 朝鮮半島に生まれ、戦後に引き揚げ、広島や大阪で暮らした後、大学入学を機に上京。大学の先輩に誘われて「アルミサッシ」のメーカーを一緒に立ち上げたが、数年で倒産。大学の先輩だった妻・民子さん(72)の実家が越谷にあったことから、1964年、越谷に移住し、夫婦でドライクリーニング店を開店した。民子さんが趣味で書道をしていたため、作品に押す「雅印」が必要になったところ、伊東さんが「(買うと高いので)もったいないので、おれが作ってあげる」とチャレンジしたのが篆刻制作の始まりだ。
 市販の本を読んだり、通信教育を受けるなどして、自己流で始めたが、作っているうちに面白くなり、「もっとうまくなりたい」と浦和のカルチャーセンターに通い、篆刻家の柳沢芥舟さんの本格指導を受け、1990年から5年間通った。
 今では、民子さんの知り合いに頼まれるなど、年間200個もの制作をこなすなど多忙な日々。すっかり篆刻のとりこに。「死ぬまで続けたい。文字は自分の想像力をかきたてる。象形文字のデザインのアイデアはつきません」と伊東さん。妻の民子さんは「評論家」として作品の批評をする。「いいものはいい、悪いものは悪いと作品の批評は毎回、聞いてくるので、しています。いつまでも元気で続けてほしい」とエールを送る。
 来年、伊東夫妻は「金婚式」を迎える。書道と篆刻という夫婦二人三脚の作品作りは続く。

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