ニュース

「垣根のない音楽を」・ボーカリストの伊藤けいこさん

2013.1.7(越谷市)
ニュース写真
 越谷市蒲生在住のボーカリスト・伊藤けいこさん(52)は、越谷市障害者就労訓練施設「しらこばと」のホールで昨年9月30日、市内障害福祉サービス事業所利用者と特別支援学校生徒などを対象とした、地域のアーティストとホールの共同企画「心をつなぐコンサート」に出演した。劇場に出かけることが困難な人々の場所に出向いてコンサートをしたい、そんな思いから生まれたコンサートだった。
 「みんなで楽しみ、名前通り“心をつなぐ”コンサートにしたい」という思いで臨んだ。会場と一体になり、ゴスペルやオリジナルソング、「てのひらを太陽に」を一緒に歌った。パントマイムでは体を使い表現することを伝えた。人の前に出ることが苦手な子も壇上に上がり歌った。「心が通い合うのを実感したコンサートだった」という。
 伊藤さんが福祉に目をむけるようになったのは、自身が主宰するエレクトーン・ヴォーカル科の音楽教室の生徒から、合唱部の指導をしてほしい、との呼び掛けだった。その縁で不登校や知的障害を持つ生徒が通う通信制サポート校で07年から約2年間、合唱部の講師を努めた。苦い経験をし、それでも高校卒業の資格を得ようと頑張っている生徒たちに対して、表面的な向き合いだけではなかった。音楽を通して、自分の足でしっかり立って生きていくことを伝えるためにいる、という気持ちを持って全力で指導にあたった。「ここには本物と本音がある」。そう思った。
 11年には同じく教室の生徒を通じて、先天的に耳(耳介)の形成が不十分な「小耳症」患者のバンドの指導にあたった。聞こえない聴力を補うため、骨伝導式補聴器BAHA(頭蓋骨にチタンを埋め込み補聴器を取り付け使用する)を装着したメンバーの指導も、障害のない聞こえる耳側に立つなど、指導状況の工夫はあったがいつもと同じ心情だった。「心の響きや心からの声、伝えたいことを、音に乗せて歌うことを目指した」という。
 アーティストとして、芸術を通して相手の心を開きたい。そんな思いがいつもある。その昔、天の岩戸に閉じこもった太陽の神アマテラスを出てこさせたもの、それは暗闇の中での人々の楽しげな歌や踊り。「それこそが芸能の心であり、アーティストの役目」だという。誰とでも、垣根のないコンサートを催していきたい。そんな伊藤さんを出会いが導いていく。

>戻る